主従


 

曹操が侵攻する以前から、陶謙が治める徐州は、うち続く飢饉や黄巾賊の残党などにより疲弊の極みにあった。また、新興宗教や西方の仏教が幅をきかし始め、多教な国として異種的な文化を臭わせてもいた。
陶謙は賊徒を、毒をもって毒を制す、という手段で退治し、つまり賊軍を官軍として雇い、自らの手を汚すことなく平定したのである。

しかし、曹操が激を飛ばした反董卓連合軍の結成時には、彼はひそかに董卓へ貢ぎ物を送り、正式な徐州の太守となっている。
兎の面をした狸翁。
曹操がそう呼んで、目の敵にするのも当然である。

さらに、徐州遠征の大儀名分を与えることとなる、曹操の父、嵩と一家の暗殺。
曹嵩の上機嫌を引き出しつつ、徐州に引き留める為の工作は裏目に出、迎えに行かせた賊出身の部下は、嵩を殺し、膨大な金品を懐に逃亡したのである。
たちまちのうちに、ささいな小細工は大いなる恐怖をもたらすこととなった。

徐州の民衆が報復の名の下に、命を落とした。
被害は数十万。
曹操の勢いに、陶謙はたじろいだ。
守戦もままならず、敵の軍勢は十余もの城を突破した・・・。


陶謙は白髪を増やし、やつれきった顔で座っている。
血なまぐさい主である彼も、今の状況に追い込まれた原因を過去の因縁に求めているのかも知れない。
将軍の列に混ざり、劉備の姿がある。
陶謙が見せる温和な人柄に隠された一面を、独特の臭いを彼はかぎわけていた。

陶謙の要請を知り、劉備は率先してこの地にやって来た。
途中、流浪の人民や浪人を吸収し、城内に入った。
危地の歓待はこの上ないもので、陶謙は兵を付けて防備にあたらせた。。
劉備の兵には、彼の学友・公孫[言贊]の配下であった一将、趙雲の姿があった。

趙雲は、劉備の懇願に承知し、主を説得して劉備について来た。
また、公孫[言贊]も劉備の為に、惜しみながらも趙雲を劉備に付かせた。
曹操の二度目の遠征は、誰もが徐州の陥落を予期させるものであった。
趙雲も知らぬわけではない。


今や徐州の最後の主城、[炎β]の城壁の上、劉備は趙雲を誘って、ぞくぞくと集結しつつある曹操の軍勢を待っていた。
「なぁ、子龍・・・」
「はい」
「お願いがあるんやけどなぁ〜・・・」
ゆっくり言葉を引き延ばすのは、何か考えながら喋る時の劉備の癖である。趙雲は早く言えと思うが、さすがにそれは言えない。
「玄徳殿。・・・改まって、私に何を申されたいのですか?」
急かす趙雲だが、そんなかっこつけて遠回しに言わんでも・・・と劉備は思っている。

同じ厳しい北の生まれ、貧しい生活をしてきた割に、劉備と趙雲、その性格は全く違う。
劉備は協調を常とし、趙雲は孤独を好む。
会話も楽しみを加える劉備に対して、趙雲は話の芯を押さえるだけであまり会話に乗ることはない。

「この戦が終わっても、なぁ・・・。ま、どうなるかわからんけど。良かったら、ここにいてくれへんか?」
「今さら何を仰せになるかと思えば・・・」
低く、皮肉まじりに趙雲は笑った。

劉備の背後に立つ関羽が怒面を現した。
ぐりぐり、剣を握りしめる音を耳にして、劉備は再度尋ねた。
人の道をわきまえた関羽は、プライドの高さはもちろん、己以上に劉備への尊敬の念が強い。何人たりとも、劉備を馬鹿にする者は、すなわち『敵』である。

「貴方がこの地に私を誘った時から、力になろうと決めていたのです」
「そっか?ありがたい!・・・なぁ、雲長」
雲長、と言葉をかけた時、劉備の目が鋭く関羽を牽制していたのを趙雲は見逃さなかった。
無論、それは見て見ぬふりである。
「は・・・」
関羽は素直に引き下がる。
打って変わって、小躍りしそうな劉備の笑顔に、趙雲はつられて笑ってみた。
が、依然、劉備の背後で気高き武人は、不器用な笑顔を作りながら、趙雲に対して小さな冷光を向けていた。


完全に信用されるには、遠い時間が必要だろう。
趙雲は彼らと出会った時、そう考えていた。
劉備、関羽、張飛の三人の互いの絆の深さは、実の兄弟よりも固く、揺るぎないもの。
と、思っていたが、どうやらそうではないらしい。
劉備という男、浮かれた様子も見せるが、かなりの修羅場を踏んでいる。
たった一言で、その目を向けるだけで、あの関羽すら退ける。
それだけ肝が据わっているということだろうか・・・。


「ほな・・・行ってくれっか?」
劉備の指が、趙雲の視線を誘った。
その指が示す城壁の外、
深い緑林の中に、ちらほら、白い旗が見え隠れした。
曹軍の報復の弔旗である。

「承知」
趙雲は悔しがる張飛を横に、槍を携え馬に飛び乗った。
先陣の彼に続いて、劉備兄弟も城を飛び出す。
「死人(しびと)の園に、咲くは我が身か・・・・・・ふん、俺には似合わぬ」
趙雲は張飛を真似て詩人ぶったものの、独りおかしくなってニヤリと笑い、そのまま馬の速度を速めた。

曹軍は林を抜け出ると、一直線横に、騎馬兵を前、歩兵をその後ろとして並び始めた。
一気に蹴散らす構えである。
かまわず、趙雲は背後を振り返り、兵が揃うのを確認すると、槍をかかげた。
「行くぞッ!!」
おおお−−−ッツ、と徐州兵の声のうねりが広がった。
劣勢覚悟、死地の突撃を前にした、壮大な喊声。

・・・[炎β]城の東、戦闘は始まった。





書いていて失敗した・・・と思いましたが、もういいや(ほんとにいいのか?)
劉備・・・変ッ!中途半端な関西弁で収集つかなくなってしまった。田舎で不良してたから口が悪いイメージがあったので、関西弁使ってみたけど。ノリが軽すぎ。とりあえず身近な人から取ったんだけど・・・これって違う気がしてきた。
しかも、兄貴分だけじゃ説得力ないからと思っていたら、関羽との兄弟仲の良さが売りな人なのに、従えてるだけって感じ・・・関羽と張飛あれだけ強い人を引っぱっていくんだから、それなりに精神的な強さもいるんだけど。劉備やっぱり変。
・・・「ほな、行ってくれっか?」と、軽く言われて戦場には行きたくないなぁ。

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